法然の手紙
夜、寝るきわには、また手ののびるに任せて、本棚から10年前に読んだ本を。
- 作者: 石丸晶子
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 1991/06
- メディア: 単行本
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お手紙くわしく拝見しました。
いったいに阿弥陀との縁があさく、機いたらずにいまだ往生できる状態にもなっていない人々は、弥陀の本願をきいても信ぜず、他人が念仏しているのをみては腹をたて、怒りをいだいてこれを邪魔しようとするものです。
その辺のことをよくお心得になって、どんなに人々があれこれいおうとも、お心をさわがすことのないようになさってください。
頑固な心ではじめから信じようとしないでかかる人に対しては、仏でさえもどうしようもありますまい。ましてや凡夫であるわたくしたち人間に、頑固な心を仏の教えにむかって開かせる力などないのです。
わたくしたちの信仰をそしったり、信じようとしない者たちは、永い間地獄にいてまた地獄に帰っていく人々なのだと、よくよくお心得になって、こわがったりせず、立派な態度で相対してください。
とにかく、余人はしらずあなたにあっては、今度という今度は必ず往生しようと思し召してください。
心ある人であればわかってくれるでしょうし、また道心のない人であれば、いくら百千万の道理をつくしても納得してはくれないでしょう。
何事もお手紙には尽くしがたく存じます。あなかしこあなかしこ。