法然の手紙

夜、寝るきわには、また手ののびるに任せて、本棚から10年前に読んだ本を。

法然の手紙―愛といたわりの言葉

法然の手紙―愛といたわりの言葉

お手紙くわしく拝見しました。

いったいに阿弥陀との縁があさく、機いたらずにいまだ往生できる状態にもなっていない人々は、弥陀の本願をきいても信ぜず、他人が念仏しているのをみては腹をたて、怒りをいだいてこれを邪魔しようとするものです。


その辺のことをよくお心得になって、どんなに人々があれこれいおうとも、お心をさわがすことのないようになさってください。


頑固な心ではじめから信じようとしないでかかる人に対しては、仏でさえもどうしようもありますまい。ましてや凡夫であるわたくしたち人間に、頑固な心を仏の教えにむかって開かせる力などないのです。


わたくしたちの信仰をそしったり、信じようとしない者たちは、永い間地獄にいてまた地獄に帰っていく人々なのだと、よくよくお心得になって、こわがったりせず、立派な態度で相対してください。


とにかく、余人はしらずあなたにあっては、今度という今度は必ず往生しようと思し召してください。


心ある人であればわかってくれるでしょうし、また道心のない人であれば、いくら百千万の道理をつくしても納得してはくれないでしょう。


何事もお手紙には尽くしがたく存じます。あなかしこあなかしこ。